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*聖女の末裔* アルテイシア・ルン・ヴァレリアの想い
著:六道来飛
「アルテイシア…その身を私に捧げてくれ」

どれほどこの時を待ちわびただろう

兄は私を自室に呼び出しこう言った
普段から何も口にしない兄だが、この時の私はその言葉が意味するところを理解していた

ずいぶんと前から兄は一人で何かと戦っていた

兄は人一倍このファルガイアの地を愛していた
私達の祖先が守ったこのファルガイアを…

あらゆる事を学び、そしてその知識と技術を持って
ファルガイアの秩序を影ながら支えていた兄

私も同じ血を持ち、兄と同じ様にファルガイアを愛している
だけど私は兄と一緒に行動する事は無かった
兄がすべての事を背負っていたから…

それが分かったのはあの日――

誰にも行き先を告げず、丸一日シャトーへ帰って来なかったあの日…

兄はアガートラームが眠る剣の大聖堂に居た

アガートラーム――かつてこのファルガイアを焔に染めた厄災
ロードブレイザーに唯一抵抗出来たとされる伝説の聖剣

使い手は名も無い下級貴族で、その剣をどうやって手に入れたかは誰も知らない
そしてロードブレイザーと対峙して七日…アガートラームを残して剣の聖女は姿を消した
焔の厄災と共に――

その日から英雄の象徴として、幾人がその剣を手にかけたが
大地に突き立てられたアガートラームが抜かれる事は無かった

兄はアガートラームが抜かれる時は、アガートラームを必要とされる時
ロードブレイザーの様な、ファルガイアに危機をもたらす存在がある時だと話した
そんな日は易々と来る事が無いから…と言ってアガートラームには手を触れなかったのに

なのに…兄はその日、剣の大聖堂に居た

伝説の剣の前で真っ青な顔をして倒れている兄――

見えるはずもない情景が「視え」た
それは私達が同じ星の下に生まれた双子の成せる技――?
私はすぐに剣の大聖堂へと向かった

そこには私が「視た」時と同じ状態で兄が倒れていた

両親を早くに失い、親戚と呼ばれる人達も居ない…
私達はこの世でたった二人の肉親

幼き頃からなんでも出来た兄…
その兄が血の気も無く倒れている

私の心臓は止まりそうだった―――

兄が私の目の前から居なくなるなんて…
どうして良いか分からなかった
ただ、兄の側で泣くしか無かった

こんなにも自分が無力だったなんて…

幸い兄は一命を取り留めた
「右足」という大きな代償を払って
目が覚めた兄はさして驚く事もなく、その事実を受け入れた

「所詮私には扱う事が許される剣では無いのだろう…」

兄に扱えなければ、誰が扱うというのだろう
そう思っていると「アルテイシアなら…あるいは…」と兄がつぶやいた

私に扱えるというのだろうか?
そうすれば兄の役に立つ事が出来る
兄一人に辛い思いをさせずに済む…

「兄さまのお役に立てるなら、私どんな事でも致します」

たとえアガートラームを扱う事が出来なくても
何か手伝う事が出来れば、兄が背負い込んでいるモノを軽くする事が出来る
苦しみを分かち合える…

「お前を失いたくは無い…その気持ちだけで十分だ」

そう言ってまたすべてを自分の双肩に掛けていく…
私も兄を失いたく無いのに

私にもう少し力があれば…強くなりたかった、兄の様に

兄はベッドから起きられる様になると、すぐに松葉杖をついて出掛けて行った
何処へ行くのか、いつも誰にも告げる事無く…

そんな兄をひどく遠くに感じる
同じ血肉を分け合った兄妹なのに、私はいつも置いていかれる…
兄に追い着く事も出来ないまま、ただ待つしかなかった

兄が私を必要としてくれるその日まで…

しばらくして兄はシャトーを拠点に一つの組織を作ると言った

先日メリアブールのARMS部隊就任式会場「剣の大聖堂」が
テロ組織によって襲われたと言う
ARMS部隊は即日解体、メリアブールの大きな戦力が無くなった

このARMS部隊をシャトーにて再発足するらしい

おそらく兄が戦っているモノに対抗する為だろう
今まで一人でこなして来た兄がこういった手段を取るという事は
近いうちにその驚異の存在が出現する…

そう感じた私は、何か出来る事が無いか兄に尋ねる
今までは何も望まなかった兄だが、初めて私に役割を与えてくれた

それは些細な事だったが、兄が私に望んでくれたのだ
兄の役に立てる…それだけで満足だった

少し兄に近づけた気がした

そうしてARMS部隊を発足、あらゆる驚異に立ち向かって行く存在となった

ARMS部隊の人達は日増しに成長して行き
ファルガイアに驚異の存在となっているテロ組織を追い込んだ

ヘイルダム・ガッツォー……テロ組織「オデッサ」の最強にして最後の砦
その中に乗り込み、オデッサの首魁を倒した彼らを待っていたもの――
要塞浮上という脱出不可能な状況

それでも彼らは帰って来た。ただ一人を残して…
伝説の聖剣「アガートラーム」を抜き放った青年
その彼が一人残って仲間の脱出を可能にしたと言う

彼もまた、何かを自分一人で背負ってしまうのだろう…そう――兄の様に

帰らぬ彼を待ち疲れて自室へ戻った兄
その夜、兄がうなされる声に目が覚める

「兄様?どうかなされましたか…?」

兄の寝室へ様子を見に行くと、額に汗を浮かべて起き上がる兄の姿が目に入る
兄は無言で私を抱き寄せた

悪夢にうなされていたのだろう。寄せた身体から兄の早い鼓動が聞こえる…
いつもはその表情を表に出さない兄が、私を抱き締め震えていた…

私はただ黙って兄を抱き、自分の体温を与える
言葉を交わす必要は無かった
抱き合った身体から互いの体温を感じ、互いの気持ちをも感じる

兄はアガートラームに拒絶された時の夢を見ていた
あの時は口にしなかったが、拒絶されたショックが兄の心に残っていたのだろう

ずっと…こうして居たかった―――

だけど時はそれを許さなかった
このファルガイアに異変が発生した

そんな中、ヘイルダム・ガッツォーと共に星の海へ昇って行ったはずの青年が持つ
通信機の反応が現れた

彼は生きていた

兄は言う――おそらくアガートラームの…アガートラームに眠る剣の聖女の力だと
そして彼は戻って来た
再び襲ったファルガイアの驚異に立ち向かう為に…

驚異の存在…それはファルガイアの空を無くした
兄の弁によると「喰われた」と表現するのが正しいらしい

兄が戦ってきたのは、この空を喰った存在だったのだ!

その存在は実体を持たない
その為あらゆる物理攻撃が効かないらしい

兄は実体を持たない敵を「魂」に見立てて、打撃を受ける「器」を与える
そうする事で破壊が可能となる肉体が出来ると考えた

一度はこの方法でその存在を捕らえる事が出来たが
それは単なる抜け殻でしかなかった

その夜、兄は私を自室に呼び出しこう言った

「アルテイシア…その身を私に捧げてくれ」

それ以上は何も言わなかった…
でも私にはそれで十分だった

兄が何を考えてそう口にしたのか――もちろん分かっている
それが、人の道を踏み外している事も…

そうする事でしかこのファルガイアを救う事が出来ないのなら
私のちっぽけな身体が兄の役に立つなら…

「それが兄様のお役に立つなら…」

兄は今まで見せた事の無い辛い表情を出し、こう言った

「お前一人を逝かせはしない。
私達は生まれた時も同じなら、止める時もまた同じなのだ」

そうして私は兄に連れられて、このファルガイアの最深部グラブ・ル・ガブルに向かった

兄が愛したファルガイア…私達の祖先「剣の聖女」が愛したファルガイア…
私が愛するファルガイア…

その中心、生きとし生けるものの祖となった「泥の海」グラブ・ル・ガブルに
世界を喰らわんとする存在「カイバーベルト」が潜んでいる

兄と共にかの地へ行き、私の身体をカイバーベルトに与える
そうする事で滅ぶべき肉体を持つ
その時、側に居る私と同じ血を持つ兄の身体も吸収されると言う…

半分ずつだった私達の身体が一つになる
たとえそれが滅びへの道に突き進む事になるとしても
私が愛したファルガイアを救う事になる

同じく愛する兄の身体と共に…

兄が背負ってきた業を私も一緒に背負う事が出来る
私達の祖先から始まった事なら、私達の血を持ってそれを終わらせる

「アルテイシア…恐いか?」

「いいえ…兄さまと一緒に逝く事が出来るから」

そしてファルガイアは新しい明日へ向かって行く




――願わくば…私達の取った行動を、剣の聖女が悲しまない様に――

罪と罰で書いたアーヴィングの話と対になるアルテイシアの話です。
彼女は大事な役につきながらゲーム中ほとんど出番が無かった可哀想な人です。おのれトカゲ達め!(笑)
出番が無いおかげで彼女の性格が全くもって読めないんですが、アーヴィングと同じくブラコンなんでしょうねーと思って書きました
女性の心情を書くのは難しい…双子なので想いが共通している事を出したくて、アーヴィングと同じ様に終わらせてみました。
もっと彼女のイベントを見たかった…
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