Sorry! This Page Is Japanese Only./since 1999.10.25
*聖女の末裔* 課せられし使命
著:六道来飛
私の身体の中には「剣の聖女」の血が流れている。
ファルガイアの人々から英雄と崇められている「剣の聖女」

はるか昔、このファルガイアに魔神が降り立った。
魔神の名はロードブレイザー
彼の存在はファルガイアを朱に染め、人々を恐怖に陥れ、
ファルガイアを我が物にしようとした焔の厄災…

その時一振りの剣でロードブレイザーに立ち向かったのが
「剣の聖女」と呼ばれる一人の少女。

ロードブレイザーと戦い続け、彼の存在を倒せないと悟った彼女は
剣の力を借り、自らの命と引き替えに地平に封印した。

後に残ったのは大地に突き刺さった聖剣アガートラームのみ…

こうしてファルガイアは一人の少女によって救われる。

彼女が残した聖剣は英雄の象徴とされており
幾多の人々がそれを手にしようと挑んだ。
だが、未だに誰一人として事を成し得ていない…

そんなファルガイアの窮地を救った剣の聖女の血が
私の身体には流れている。
幼き頃より聞かされ続けて来た剣の聖女の血…

だが母はその血を証明する事は出来なかった。
それは我が家が本家筋では無かったからだ。

下級貴族とはいえ、剣の聖女の本筋であるヴァレリアは財に恵まれていた。
同じ血を引く我がベルナデットは傍系で、正当な相続者と認められていなかった。

それでも自分の中に流れる聖女の血は疑い様も無い。
聖女の血を引く者には左目の下に必ず泣きホクロがある。
母も…そして私にも間違い無くそのホクロは遺伝している。

だからこそ母は自分に流れる聖女の血を私に解き続け
自分達を認めない本家を恨み続けた…

聖女の血に甘え、何の行動も起こさず死んでいった母。
待っているだけでは、その血の相続を放棄しているのと同じだ…

認められる為には自分の中に眠る、聖女の血を呼び起こさなければならない。
現に本家の若き当主はファルガイアを守る為に、色々な事業を手懸けていると言う。

母の様に気位いが高く、何もしないままでは落ちぶれて当然だ。
母の様にはなりたくなかった…
自分の中の血を確かめる為には、かつて剣の聖女がした様に魔を打つ必要がある。

母が居なくなった日から、私は魔を祓う事にした。
そう―――剣の聖女と同じ様に…

初めて魔を祓った時、私は私の中に流れる聖女の血を確信した。

誰に認められなくても良い。
私は確かに感じたのだ…
魔を祓う事―――それが私の存在意義であり
私の生きる糧なのだ!

だが剣の修行さえもしていない少女にとって
魔と戦って無傷であるはずも無い。

数日前までは母の恨み言を聞かされるだけの人形だった私の身体…
魔を倒し、聖女の血を感じながらも動かなくなった腕…
もはやその機能を果たさなくなった右目…

このまま魔を祓い続ける事など出来るはずも無い。

私の身体の変わりに動くもの…
それが今や私の全身を包む義体(シルエット)だ。

あれから幾多の魔を祓い続けて来た。
その度に身体の一部が失われて行き…
ついには私に残された生身の部分は脳と左目だけになった。

それでも私は魔と戦って行く。
辛いと思った事は無い。
私の中に流れる聖女の血が、私に生きる望みを…誇りを与えてくれる。

そして私は渡り鳥として凶祓を生業として行った。
時には自分で情報を集め、時には依頼されて魔を祓っていく…

そんなある日、一人の青年に出会った。
青年の目的は私と同じ…魔を祓う事だった。
そして目的が同じなら行動を共にしようと言ってきた。
断る理由も無かったので共同戦線を取る事にした。

それにしても…と青年を見やる。

凶祓を生業としているには服装が綺麗だ。
手には一本の剣のみ…
とても同じ渡り鳥には見えなかった。
名を上げる為に魔を打つ貴族…といった感じだ。

だが長い前髪から覗く目には自信が溢れていた。
そして青年の剣の腕前は、その自信を証明するに値した。

鞘から抜き放たれた剣の動きは優雅で、魔に確実にダメージを与えていく。
今まで何人もの渡り鳥の剣筋を見てきたが
これほどの腕をもつ者に出会った事は無かった。

そうして魔を薙ぎ払っていく…

戦闘が終わって髪の乱れを整える青年の顔をみて驚いた。
その髪に隠れていた彼の左目の下には
私と同じ…ホクロがあった。

思わず私は彼に尋ねた。

「何故ヴァレリア家の当主が凶祓を?」

そう言われて驚きを隠せない様だ。
名乗ってもいないのにヴァレリアの人間と問われれば無理もないか…
彼は警戒した様子で私を睨み付け、問い返してきた。

「何故…私がヴァレリアの人間と分かった?」

ここで名前を名乗っても分家の姓など知らないだろう…
それに私の名前は渡り鳥になった時に捨ててしまった。
私は残された生身の部分を守る為にしている眼帯を捲って、彼に見せた。

「貴方と同じ…剣の聖女の血を引いているから……」

彼は私の左目の下にあるホクロを見て納得した様だった。

「では君がアイシャ・ベルナデットという訳か…」

驚いた事に彼は分家の存在を知っていたのだ。
家系図を持っていれば当然知り得るだろうが
今まで連絡もしなかった分家の…最後の人間である私の名前まで知っていようとは…

「君も同じ血を引いているなら分かると思うが、
このファルガイアは剣の聖女によって守られた。
その子孫である私がファルガイアの為に魔を祓うのは当然の行為だと思うが?」

なるほど…彼には私とは少し違う理由がある訳だ。

「わざわざ自分が出向くとは…他にも色々手懸けていると聞いているが
器用なものだな」

私には出来ない芸当だ。

「誰かに頼むにも心配でね…それに今回はちょうど手が空いていただけだが…」

誰かに任せる気になれないのは同感だ。
結局信じられるのは自分の腕のみなのだから…

「だが君の腕なら信頼出来るな。
君さえ良ければこういった仕事を頼みたいのだが…」

「依頼とあれば何時如何なる時でも…」

ヴァレリア家の情報網があれば、何処で凶祓が必要かすぐに分かるだろう。
自分で魔を探す事も可能だが、依頼ともなれば当然収入がある。
私の義体を維持していく為にも損な取引ではない。

「では凶祓が必要な時は君に連絡しよう。」

こうして私は専属の依頼主を得た。

もっとも仕事はそう頻繁にあるわけでは無かったが
それでも以前に比べれば生活に困る事も無いし、義体の調整も充分に行えた。

同じ血縁のよしみで世話になる気は無かったが
仕事としてなら上手く付き合えるだろう。

恐らく一癖も二癖もありそうな若き当主は
私の意図を読んでそう申し出たのかもしれないが…

彼から連絡が入り、私が指定の場所へ向かい魔を祓って行った。

だがある日、彼は自分の城に私を呼び出した。

自室へ通された私の目の前には少しやつれた彼が
大きな執務机に座っていた。

「君に…是非頼みたい事がある」

彼にしては随分と弱気な発言に思えた。
仕事とは少し違う内容らしい。

「聞かせてもらおう…」

彼の口から出た言葉は信じがたいものだった……

近々このファルガイアが目に見えない存在に喰い尽くされるというのだ。
彼がファルガイアの為にありとあらゆる情報や
技術を使って観測した結果のことだから間違いは無いのだろうが…

その存在を倒すべく、ファルガイアに生きるすべての人の心を一つにする事―――
そうでなければ、その存在に立ち向かう事は叶わないだろう事―――
その為、どんな卑劣な手を使ってでもファルガイアを守る計画を進めていく事を聞かされた。

そしてすでに計画は始まっているらしい。

「勝算があるわけではない…だがファルガイアを守る為にはやらなければならない。
例えそれが自惚れであっても、私は私に出来る事を…
人道に外れた事でも成し遂げる覚悟がある!」

「それで…私に手伝えと言うのだな?」

仕事として完璧にこなせるか分からないから依頼出来なかった訳か…

確かに未知の存在を倒せるか否か分かるはずも無い…
しかもその存在はファルガイアを喰う見えない存在。

どう戦えば良いのか…何処に居るのか…
分からない事だらけだ。
彼には予測はついているのだろうが、すぐに手を出せる状況でも無いだろう。

「引き受けるか否かは君にまかせる。
私の…人を人として考えない計画に賛同出来るなら…力を貸して欲しい」

ファルガイアに生きる人の心を一つに纏めるなど、不可能に近い。
だが彼はそれを可能にする計画がある。

人を人として考えない計画…この言葉から察するに
犠牲を伴う計画のようだ。

「良いだろう…私も剣の聖女の末裔。
ファルガイアを守る為なら命も惜しまない。」

漸く彼は安堵の色を、その顔に浮かべた。

そして彼の計画を聞かされる。

見えない存在に対してなど抵抗出来るはずも無い…
まずは目に見えてかつ、自分たちの生活を脅かす存在が必要だ。
そして自分達の代わりに、その存在に立ち向かってくれる人達が居れば
その人達と心を共にするだろう。

人々に驚異となる存在―――――

それはつい先日、感応石を使ってファルガイア全土に活動表明した
テロ組織「オデッサ」の事。
彼らが活動出来るのは、彼の援助あっての事だそうだ。

そしてもう一つの存在―――――

オデッサに立ち向かい、ファルガイアの人々の心を一つに束ねる為に
結成された部隊「ARMS」

彼らの力量は充分だろうが、如何せんレベルがまだまだらしい。
そこでいち早くレベルアップしてもうらうには「敵」が必要というのだ。

すでにオデッサとも対峙しているが、オデッサも自分達の思想の為
ARMSばかりを相手にはしていられないはず…

そこで私がオデッサ側に着き、ARMSの成長を促す。
折りを見てARMSに合流し、最終的にはファルガイアを喰う存在と戦う―――

計画はそれほど複雑ではないが、一つ間違えばオデッサが勝ち
ファルガイア全土を力で支配するだろう…

どちらにしろ最終的にはカイバーベルトと対峙させるつもりだろうが
どう転ぶかは今の時点では彼にも私にも分からない。

「だが私は彼らに…いや、彼の内に秘められし未知の力に期待している。
ARMSは必ずオデッサを打ち破るだろう。」

「彼の内に秘められし未知の力?」

ARMSにそんな力を秘めた人物が居るのだろうか?

「見に行くかね?彼の力を覚醒させる為の計画を遂行中だが…」

「…貴方だけは敵に回したくないな」

「私もそう思うよ…」

彼は自嘲気味に笑って席を立った。

その時初めて気付いた。
彼は松葉杖を手にしていたのだ。
以前に会った時はそんなものが必要な身体ではなかったはずだが…

「足を……どうかしたのか?」

彼は聞かれるであろうこの質問に対し
まるで他人事の様に語った。

「この計画を進める時に是が非でもアガートラームを手にしたかったが…
私の自惚れを打ち砕かれて…ね。拒絶されたんだよ。」

アガートラーム―――

私達の祖先、剣の聖女がロードブレイザーに立ち向かった時に手にしていた聖剣。
ファルガイアを救った英雄の象徴であるその剣を抜いた者は誰一人として居なかった。
そして直系の子孫である彼でさえも…

「おかげで行動に制限がされてしまった。
本来ならARMSの先頭に立って行動したかったが、それさえ叶わなくなった…」

それほどアガートラームに拒絶されたのか…
彼の剣捌きが見られなくなったのは実に惜しい気がする。

「では行こうか…ゴルゴダ刑場へ―――」

ゴルゴダ刑場―――

シルヴァラント領、ハルメッツの町に程近い丘の上にある刑場。
今は使われる事が無いこの場所で、オデッサがARMSを罠にかけたと言う。

公開刑の為か、入り口付近には大きな広間がある。
そこに一人の青年がオデッサの放つタクラスに手を出せないでいる。
このまま逃げ続ける事は無理だろう。

「見ていたまえ…彼の内に眠る力が解放されるところを―――」

どうやら彼が未知の力を持つらしい。
そして今まさにタクラスが彼を捉えた――――と思った瞬間
彼の身体は白い光に包まれた。

その光の中から現れた姿を見た時、私の中の血が騒ぐのを感じた。

「あれは…まさかロードブレイザー?」

聖女の血が教えてくれる。あれは間違い無くロードブレイザーの放つ波動…

「そう…彼は降魔儀式によってロードブレイザーをその身体に宿した。
そしてその手でアガートラームを引き抜き、
アガートラーム共々彼の内的宇宙へ封印させた。
彼の強い意思の賜物だ。」

確かに彼から感じられるロードブレイザーの波動は
私の中の血が知っているものとは少し違う様だ。
アガートラームと彼の意思によって
その力をコントロールしているのだろう。

あっという間にタクラスを倒してしまった…

「一歩間違えば恐ろしい相手になるな……」

彼の意識がロードブレイザーに飲み込まれれば
ロードブレイザーは彼の身体を使って再びこのファルガイアを求めるだろう。

「その為にも君を選んだ…君ならば彼の内にあるロードブレイザーの変化を
見分ける事が出来るだろう。
そしてもし、彼がロードブレイザーに乗っ取られたら…」

「…聖女の血において倒す……良いだろう。
彼らと戦う理由は充分にある。彼の名前を聞いておこう。」

「アシュレー…アシュレー・ウィンチェスターだ
いつ仕掛けるかは私に連絡しなくても良い。
君にすべて任せよう。」

「分かった…ではいずれ……」

そして私はその場を去った。

ロードブレイザーとアガートラームを内に秘めた青年―――

彼が精神的にかなりなダメージを受けない限り
ロードブレイザーが表面化する事は無いだろう。

その時は来るかも知れないし、来ないかも知れない…
来たとして果たして私に倒せるだろうか?

いや、今は考えても仕方が無い。
ロードブレイザーの片鱗を見せる彼と戦う事で
私の中の聖女の血が満たされる…

それで良い。私にはそれが生き甲斐であり喜びである。
課せられた使命が大きいほど、自分の存在理由を見つけられる。

その為に生きているのだから……<

なんだか尻切れで申し訳無いです…
本当はアシュレー達と初対決まで書きたかったんですが記憶の中で書くには限界がありました(汗)
こうして書いているとカノンも可哀想な人ですよね。(実際苦労しまくっていそうですが)
でもきっと本人は自分の生き方に納得しているはずです。
そういった事が出せていれば、今回の話は成功なんですが…またしてもアーヴィングが出張ってますねぇ…
実は今回の話、カノンがシャトーに初めて来た時アーヴィングと会話していたのを見て(会話の内容は覚えてないんですが)
何かある…と勝手に憶測してしまったところから来ています。
戻る
かえる急便@管理人:都深野 恵/動作確認:Internet Explorer6.0